「軍艦島」が観光スポットに

http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/food/364010
先週のニュースなので、すでにあちこちで話題になっていたようだけど、ま、一応。
明治23年以来、三菱所有の炭鉱として約80年にわたり八幡製鉄所を中心に石炭を供給しつづけた通称「軍艦島」は、日本の近代を象徴するような存在のひとつと言える。日本最初の鉄筋コンクリート高層アパート(大正5年)もあるようだし、これを歴史的な「遺産」として「保存」しようとする動きなら、それに異を唱えようとするつもりは、基本的にはない。歴史的に見て十分価値あるモニュメントたりうるこの島が、ただただ風化するにまかされている現状には、やはり現実的な対応が必要だろうと思う。
でも、その一方で、ロマン主義的な表象としての「廃墟」を愛好するものとしては、ちょっと複雑な気分がなきにしもあらず。「歴史遺産」としてきちんと「保存」されてしまうと、それはもはや「廃墟」ではないような気がしてしまうからだ。「廃墟」というものの魅力を、長い時間の経過によって朽ち果て崩れゆくにまかされているその姿に見るなら、「保存」という作業はそれとは相容れないもののように思える。また、時代の流れに取り残され、省みられることもなく打ち棄てられたモノたちへのまなざしが「廃墟」なるものを構成するのだとすれば、「歴史遺産」として公的に認知され、「観光」の対象となった「軍艦島」が、それ以後も「廃墟」として欲望の対象となるだろうか、という疑問を抱いたりもする。
軍艦島」の場合、炭鉱閉山から30年ほどしか経ってなくて、そこに住んでいた人やゆかりのあった人の記憶がまだまだ風化していないこともあるし、あまり安易な観光地化の動きにはならないといいんだけど、って思う。ま、それは多分に杞憂にすぎるかんじではあるけど、ただ、単なる「ブーム」を越えて、「廃墟」なるものへのまなざしそのものを問うきっかけにもなりうるかな、って個人的に思ったりもしたニュースだった。いずれにしろ、今後どういうふうな動きになるのかは気になるところだね。
【参考】
http://www.interq.or.jp/cool/unya/gunkanzima/
http://www.gunkanjima-wh.com/
http://www.ambixious.co.jp/g3/